「学術論文って,どうやって読んだら良いか・・・わからない( ;∀;)」
初級編
文章読むの「苦手!」と言う方には,動画も準備しました!
当大学は学部3年生の秋学期より研究室にプレ配属となります。研究室に配属前後では,これまでの日々の生活も大きく変わります。
研究室配属後には,学部3年生は先輩学生さんとチームを組んで研究を進めていきます。
・研究室生活はコチラ >> 研究生活
・また,当ラボの修士”阿部真弓”さんが リクルートによりカッコ良い取材を受けています。こちらのサイトも当研究室での生活をイメージできるかと思います。 >> 阿部真弓(#幸せをシェアする)
研究を進めながら,下記の事について実践的に学んでいきます。
- 各種分析装置の使い方
- 分析結果の見方
- サンプル準備
- サンプルの作り方
- 実験ノートの取り方
- 資料(パワポ,ワード)作製
その中でも,チームではなく個人によるところが大きくなるのが【論文調査】です。大学や文系・理系にもよりますが,研究室に配属することで「論文を読みます(読まされます)」。
学術論文には和文で書かれたものも多くありますが,当然「英文」で書かれた論文の方が絶対量が多いために【質の高い】論文に出会うのも「英文」で書かれたものが多いのは確率的にも自明です。
また,多くの学生さんが英語に苦手意識があるでしょう。「英文」に苦手意識があり,結果として「英文で書かれた学術論文」を敬遠するぐらいであれば,DeepLやgoogle翻訳を大いに活用しましょう。
さて,
今回は研究室配属後に大いに悩む【論文の読み方ガイド】を公開します。
「学術論文って,どうやって読んだら良いか,わからない!」とお悩みの学生さん!
これで,「効率よく」論文を読めること,間違いありません!
論文の読み方って,実験やパワポの使い方と違って,教えてくれません。学生実験でさえレポート作成方法を教えてくれないのだから,そりゃ「論文の読み方」もわかりませんよ。
あなたは悪くない!
手探りで論文を読み始めると,必ず突き当たるのが
辛い・・・
この読み方であってる???
と,誰しもが思うはずです。
私も学部生の頃は,学術論文を読み始めて「???このままで大丈夫??なんだ。どうすればいいの??」とかなり悩みました。今では,大量に論文を読み漁り・学術論文を投稿・掲載され,論文を査読する側も経験したことから,「論文の読み方・書き方」を教えられるまで成長しました。
私が育んできた苦労の時間をすっ飛ばして,ノウハウをご紹介します。
学術論文を読む理由
ラボ配属後に,指導教員や先輩から「この論文読んでみて」と言われます。
「この論文 読んでみて!」
学術論文を読む理由は,「宿題」の為ではありません。学術論文を読むことによって,これから自分が携わる研究に関する情報を得るためです。あるいは,情報を得るための訓練です。
例えば,
- 自分の研究の位置づけ
- わかっていること
- わかっていないこと( = 課題)
- 実験方法
- どんな分析を行い結果を得ているか
- どんな考察をしているか
研究室に配属直後は「1~6」の方が読む理由ですが,研究が進むにつれて「3~6」が論文を読む理由となり,突き抜けてくると「1~3」が読む理由となります。これは後述します。
つまり!
研究をしている限り,学術論文は「ずーーーーーーーー」っと読むことになります。
覚悟できましたか(苦笑)?
学術論文を読むための準備
DeepLやGoogle翻訳を使って英文を翻訳しても思うことがあります。
「意味がわからん・・・」
論文をスラスラ読むためには,「語彙(英語力)」と「科学的な基礎知識」が必要なんです。
いざ,論文を読み始めていくと,「この英単語を和訳しても意味を知らない(わからない)。」となります。読み進めれば読み進めるほど,たくさんの知らない英単語(語彙)が出てきて,和訳しても意味が分からない?!となり,モチベーションがドンドン下がり,読み進めることに不安を覚えます。
さて,どうするか?
母国語に
頼ってください!
研究室に配属され「学術論文を読む課題」が出された場合,【必ず】所属している研究室の研究課題に関連のある論文を読まされます。
全く関係のない論文を読まされることはマレです。
※はじめて読む論文は,指導教官や先輩に提供してもらいましょう。学術論文を探すのもコツがあります。また,これは別の機会に。
つまり,母国語である日本語で書かれた卒業論文が研究室にたくさんあるはずです。先輩たちの卒業論文が日本語で書かれているのであれば,それを読むことによって,【所属研究室において必要な】「語彙」や「言い回し」,さらには「科学的な基礎知識」を手に入れることができます。
英語の学位論文ばかりの研究室に所属している読者は,google先生に聞いてみましょう。関連する日本語総説など,たくさん出てきます。
母国語で,語彙力と(研究室において必要な)科学的な基礎知識を手に入れることで,恐ろしいほど早く学術論文を読めるようになります。
母国語で読んでも難解な研究内容をいきなり英語で読もうというのが「ベリーハードモード選択中」なんです。
そりゃライフ削られます。だって、読まないといけないので。
また,母国語の良いところは「ニュアンス」も理解できます。
つまり,いきなり英語で理解しようとするから時間がかかり不安になるのです。まず新しいことを始める際には,母国語(日本語)で情報を集めてから,英文に戻ると驚くほど理解のスピードが速くなります。
学術論文の構成
学術論文を読み始めると,色々な種類があることを知りますが,今回は基本的な原著論文を例に【効率良い論文の読み方】を解説します!
学術論文を読むためには,学術論文がどのような構成であり,それぞれがどのような意味を持っているかを知る必要があります。
日本化学会のOpen AccessのURLはコチラです。無料で学術論文を見ることができます。アクセスしていただくとわかりますが,原著論文のフルペーパーは以下の構成です。
- タイトル/ Title
- 著者/ Authors
- 要旨/ Abstract
- 背景(目的付き)/ Introduction (objective)
- 実験方法/ Experiment
- 結果と考察/ Results and discussion
- まとめ/ Conclusions
- 参考文献/ References
- 図/ Figure
- 表/ Table
それぞれの特徴を簡潔に述べます。
1.タイトル/Title
自分で論文を探し始める際には,このタイトルを手掛かりにします。その論文で「1番重要なこと」をタイトルとします。論文を書くことにもなるので,このタイトル付けにも参考になります。
2.著者/Authors
自分の研究分野に関係がある人なので,チェックしておく。名前で検索することで,関連論文を探すこともできます。「研究キーワード」だけだと,関連内容の取りこぼしが出てくるので,たまには著者名で検索してみると多角的な視点の論文が読めます。
複数名の著者名がいる場合,氏名の右上に「*」が付いている著者がいます。この「*」はコレスポンディングオーサーで,著者が複数いる場合の一番責任を負う著者です。つまりは,指導教員ですね。この「*」が付いている著者名で調べると関連論文が出てきます。
3.要旨/ Abstract
論文の中身をギュッとまとめたもの。この要旨には,タイトル同様に「重要なこと」を書く必要があります。理想としては本文を読まなくてもその論文の重要なことを【定性的・定量的に すべて】知れるように書く必要があります。
4.背景(目的付き)/ Introduction (Objective)
読んでいる論文を理解するために必要な「背景(の知識・情報)」が書かれています。また,その研究分野の歴史(過去どのようなことが行われてきたのか?)や現時点の課題(何がわかっていて?何がわかっていないのか?)が書かれています。また,最後の段落には,本論文の課題に対するアプローチ(解決)方法が書いてあります。
5.実験方法/ Experiment
研究を進めるための実験方法と実験条件が書かれています。使った試薬の購入先から使用した装置のメーカー名も書かれています。つまり,この論文を読んだ人が再現できるように書く必要があります。
6.結果と考察/ Results and discussion
結果はFigure(図)やTable(表)と連動していることがほとんどです。「図や表からわかったこと」を記載するのが結果です。
※Figure(図)やTable(表)は、結果を視覚的に理解することができます。この視覚的に「わかったこと」を,【結果】の文章でさらに補完します。【考察】には,論文において著者の考えが記載されている項目です。
▼「結果と考察」の書き方をYouTube動画でまとめました。
図や表から【わかった(つもりの)こと】を「結果」の文章で補完して,著者が記載した「考察」で自分の解釈と同じなのかをチェックする感じです。当然,自分の「考察」と同じかもしれませんし,全く違うかもしれませんし,そんなことまでわかっちゃうのか??と驚かれるかもしれません。
ここで大事なことは,
教科書と同様に,論文も間違えているかもしれない。
っと知り,その可能性を残したまま論文を精読しましょう。何でもかんでも鵜呑みにしない事が大事です。
7. まとめ/ Conclusions
要旨には文字数制限があります。Conclusionには文字数制限がありません。Abstractと同じようなことを書いて冗長と思われてもいけませんが,アブストラクトに比べて,“どのような実験をして何がわかったか”,“どのような結果が得られたか”など,論文全体を網羅しておく必要があります。
8.参考文献/ References
論文中で参考した文献(教科書から学術論文から特許まで)をリストアップしてあります。著者名,学術雑誌名,発行年,巻,ページ数,等が記載されているため,読者も参考文献を探すことができるようになっています。尚,読んでいる学術雑誌によって,記載する順番が変わります。
背景や結果考察で,「自分の知らない知識」の参考論文があれば,ぜひ読んでみましょう。そうやっていけば,毎週のように読む論文がみつかります。
論文を効率よく読む【順序】
さて,このブログに到達する前に比べて,だいぶ知識が付いたかと思います。では,実践的な内容である「論文を効率的に読む」ための【順番】を解説します。
読みやすくなった~
っとなること、間違いないです。
ラボ配属直後の読み方(初級編)
まずは,ラボ配属後です。論文を効率よく読むためには順序があります。学術論文を最初から読み始めると,
挫折します。(たぶん苦笑)
言い方を変えると!論文を読む理由は人それぞれなので全文を読む必要はありません。論文を読む理由は前述の通り,以下の6つに集約するかと思います。
- 自分の研究の位置づけ
- わかっていること
- わかっていないこと( = 課題)
- 実験方法
- どんな分析を行い結果を得ているか
- どんな考察をしているか
▼
まずは,ラボ配属後の初学者向けの方法を記載します。「もう,おいら玄人だぜ!」という方は,下の玄人向けの読み方(発展編)に飛んでください。
さて,論文を読みなれてくると,大きく二つの目的で論文を読み漁り始めます。
1.自分が進めている研究において,「わからないこと」「どう解釈すべきか」など【明確な目的】をもって,査読を通過した論文の知恵を借りたいために読む。
> イメージでいうと深堀していく感じですので,「深化」するために読む。
2.自分が進めている研究の発展など横方向に広げていくためなどの【少しあいまいな目的】をもって,自分の知識を広げるために査読論文に「期待」を込めて読む。
> イメージでいうと広げていく感じですなので,「進化」するために読む。
この「1」と「2」の目的を達成できるのか?
「1」あるいは「2」のどちらの目的でも良いのですが,インターネットでキーワード検索で見つけた論文が,
果たして目的を達成できるか?
不安になりますよね。
目的を達成できるのかどうかという不安を抱えながら,最初から最後まで読むほどのモチベーションも保てませんし,全部読んだ後に「書いてなかったわ~」は時間ロスです。
では,どの順番で読むのか?
1番目
タイトルは当たり前として,要旨/Abstract を読みます。ただ,この要旨も軽く流し読みです。
2番目
まとめ/ Conclusion を読み流します。これも要旨と同様に軽く流し読みです。
そもそも「上記の目的を達成できそうだな?!」を念頭に読んでいるので,ここはそれっぽいことが書いていて当たり前なのです。それを踏まえたうえで,この全文について「想像」します。
要旨やまとめに以下のような文言があったとき,
○○についてわかった > ○○についてわかる実験をしたんだろうな。
▼▼の値が得られ,これはとても大きな値である。> その値を得る方法が当然あるんだろうな。
◆◆と推察される > 推察できるような結果があるんだろうな。
と「想像」を膨らませてください。
それから,3番目に読むのが
3番目
図や表の説明文を読みます。
慣れてくると,それぞれの図や表で著者が「どんなことを考察しようとしているか」が わかるようになります。ひとつの論文に図や表は大体5-10はあるので,本文を読まずに図や表をみて内容が想像できるようになります。「フンフン。そうだよね」みたいな感じです。
そして,あらかじめ自分が想像した内容とあっているかを確認するため や 図や表だけを見ても内容がわからない場合に,
4番目
図や表に対応した「結果と考察/Results and discussion」の本文を読みます。
この「想像してから読む」ことで格段に論文を読むのが早くなると同時に「不要な論文の切り捨て」も早く行えるようになります。
残りの読む順番は,好きな順番ではあるのですが
例えば,自分の求めていた内容に関する実験をしている学術論文であれば,5番目は Experiment Methods(実験方法)で同じ実験をするための方法を読む必要がでてくると思いますし,Reference(参考文献)をさかのぼってその考えを理解する必要が出てくるかもしれません。
最後
最後に目を通すのが 背景/Introductionです。
背景は3段構成になっています。
- 1段目: 全体の背景
- 2段目: 研究の背景
- 3段目: 研究概要
それぞれに何が書いてあるかは後述しますが,この中で3段目の「In this work」や「In the present paper」や「Herein」で始まる文章が,3段目の「研究概要」に該当します。
ここに,本論文の課題と課題に対するアプローチ方法が書かれています。
▼
つまり,
「論文の読み方」の【基礎編】としては タイトル → 要旨 → 背景 の順番で読むと,
しんどいのです!
ぜひとも初学者は,教授や先輩に論文を勧められたうえで,
タイトル → 要旨 → まとめ → 図や表 → 結果と考察(抜粋) の順番で読むのをお勧めします。
上級編
研究を突き抜けてくると・・・(上級編)
さて,読む順番について,いきなり「ちゃぶ台返し」となりますが,研究が進んでくると
「貴方は広い研究分野のどこを担当しているのか?」を明確にする必要が出てきます。
色々分かっているからこそ、この13分間が心に効くはずです!! (偉そう。すいません)
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