特許文献の読み方ガイド 挫折しないコツ

特許文献の読み方ガイド 挫折しないコツ

さて、学術論文の読み方ガイドも後ほどブログに書こうかと思いますが、まずは「特許の読み方」のコツをまとめておきたいと思います。学生さんには、学術論文の代わりに特許を読んでもらうこともあります(簡単!)。

私のプロフィールにも書いてありますが、博士課程在籍時に指導教授の承諾を得て、特許庁で「技術アドバイザー」を行っていました。プラスチック工学系の部署にいましたので、関連する特許を膨大に読む機会がありました。自分が特許を書く時のことを想像して特許を読んでいたので、「技術アドバイザー」時期として過ごした時間は、後の特許作成の際には非常に役立ちました。(特許庁の皆様、ありがとうございます!)

特許文献は初めから読むと挫折する

さて、研究室に配属後あるいは就職後に、調査のために学術論文や特許論文を読む必要がありますけど

この読み方であってるの??」っと不安になりますよね。

学術論文を読みなれている人でも、(発明者が大学じゃない。or作文者が大学の先生じゃない場合)、特許は非常に読みづらい文章で書かれており、「何が書いているかわからない!」「難しい!」と感じている方が多いのではないでしょうか??

特許の1ページ目に書いてある「要約書」を読んで、「サッ!」と発明の要点を理解したいのが,「結局、なんだかよくわからない・・・つらい・・・!」と思う人が多いと思います。このように感じる理由は単純明快で、「要約書」は学術論文の「要約」とは違って、

要約書は、特許請求範囲の記載をそのままコピペ(コピー&ペースト)していることが多い。

皆様も特許を書くなら,「この特許でなるべく広い範囲で権利を取りたい」と思うはずです。そのため、発明の権利を定義する権利書のカナメとなる「特許請求の範囲」は抽象的に記載されています。

抽象的に書かれている特許請求のコピペなので要約書もわかりづらいことが多い。

ということです。

要約書をよんで、良くわからない状態で、次のページに進むと待ち受けているのが

特許請求の範囲の本体 (抽象的な表現の塊)

です。前述のとおり、権利を広くとるための「わかりやすさとは逆方向のベクトルが働いた」世界が請求範囲の分広がっています。果てしない・・・。

そのため、「特許の読み方を教えず」に学生さんに特許を読ませると、当然1ページ目から読もうとしますので、多くの学生さんが2-3ページ目の特許請求範囲で不安を覚え挫折し始めます。

特許読みづらい!学術論文読みたい!

最近は、要約書に「課題」と「解決方法」が書いてあることが多いので、多少は読みやすくはなっています。

特許文献の読み方ガイド

一.特許文献の構成

特許文献は次の構成です。

  1.  表紙(上):出願人、発明者、出願番号、出願日
  2.  表紙(下):要約書:課題、解決手段、図
  3.  特許請求の範囲:請求項(主張したい権利)
  4.  技術分野
  5.  背景技術
  6.  先行文献技術:参考文献
  7.  発明の概要:発明が解決しようとしている課題
  8.  発明の概要:課題を解決するための手段
  9.  発明の効果
  10.  図面の簡単な説明
  11.  発明を実施するための形態:大体の実験方法
  12.  実施例と比較例
  13.  図面

これをはじめから読むと挫折します。学術論文と同様に「読むためのコツ」があります。効率的に情報を取得しましょう。また、特許を書く際にも、これらが必要となってきます。

二.図面から読む

学術論文と同じですがまずは「13.図面」に目を通します。学術論文同様に、特許文献を読むのは、自分の仕事に関係するから読みますよね。そのため、文章を読むより、図面を見る方が内容がわかります。また、図面は発明全体を説明する図が含まれていることがあります。この図がある場合、図面を見るだけで発明の全体像を理解することができます。

最初に、図面を見て「発明」あるいは「発明の全体像」を把握することで、抽象的に書かれた特許文献を読み解くことができます。

三.発明が解決しようとする課題

図面で何をしていそうかわかりますので、続いて読むのが「7.発明が解決しようとしている課題」です。この課題には、「5.背景技術」や「6.参考文献」を踏まえた【課題】が書かれています。つまり、本特許文献の発明で、「これまでと違って何をしようとしているのか?」がわかります。そして、

「8.課題を解決するための手段」が、本特許文献の権利を主張したい。(その1)

と言えます。

四.発明の効果

そして、「7。発明が解決しようとしている課題」「8.課題を解決するための手段」を踏まえて、本特許文献で、どんな【効果】が得られたのか?この

「9.発明の効果」が【新規性】と【進歩性】に関係してきます。(その2)

「これまでこうだったから、こうやったら効果が出たから、これを権利化したい!」ということです。なぜ、そのような効果が得られるのかについても科学的に説明する必要は特許には内容ですが、この理由について考えて特許を読み解くことに意味があることです。

五.実験方法や実施例

この「11.実験方法」や「12.実施例」はあまりあてになりません。権利の範囲を広げるためにも、いろいろなことが書かれています。「こんなの使わんだろ~」という試薬や条件なんかも書いてあったりします。

六.その他

上記の「図面」「発明が解決しようとしている課題」「手段」「効果」を読んだうえで、他を読むとグッと理解が深まります。お試しあれです。

特許情報プラットフォームの使い方

友野研究室ホームページの「LINK/官公庁・企業」にもありますが、「特許情報プラットフォーム」があります。このページから特許を検索することができます。(昔は、特許電子図書館みたいな名前でしたよね~)。

特許公報の検索の仕方は、特許庁が「コチラ」で公開しているので参考にしてください。特許を読む場合、周辺特許も含めて読む必要があるかと思います。特許庁が公開している使い方はわかりやすいですし、また、ひとつの特許文献には「6.先行文献技術」として複数の特許文献が記載されていますので、それらを参考に周辺特許を検索するのも方法のひとつです。

当大学は文部科学省が産学連携に関する調査において「特許権実施件数」で全国3位を記録しており、東京大学、京都大学に続く私立大学では1位の特許権実施件数を誇ります。

最後に

特許庁の「初めてだったらここを読む」にわかりやすく初心者向けに書かれています。

特許とは、世間に公開することで「発明の権利」を主張することができます。特許出願には、14,000円(2021年現在)の出願費用が掛かります。その後に、出願審査請求書を行うことで審査の順番待ちになります。つまり、出願費用を払っただけでは、審査には入りませんので注意が必要です。この出願「審査」にも所定の費用(手数料)が掛かります。登録できない理由が見つかった場合は、拒絶理由書が通知されます。学術論文でいうリジェクトですね。この拒絶理由書について、出願人は意見を述べたり、明細書の補正をすることで拒絶理由を解消できることもあります。

さて、出願してから1年半が経過すると公開されます。これが「公開特許公報」です。特許の審査を行い、特許が成立した場合は「特許公報」が発行されます。日本では、「公開特許公報」も「特許公報」も「特許公報」と呼んでいるので、名前もわかりづらいですよね。

「公開特許公報」には、【出願日】が記載されています。この出願日から20年間が特許の存続期間です。「特許公報」には、【登録日】が記載されていて、この登録日から権利が発生しています。ということなので、出願後に出願審査されて成立するので、「出願日」より「登録日」の方が後の日付になります。大体、9か月の開きがあります。

権利主張に関しては、「出願日」が大事になってきます。特許が登録されるかどうかは、「出願日」以前に公然と知られていた事項と同じであれば「新規性」がなしとして拒絶されますし、公然と知られていた事項とあまり変わっらなければ「進歩性」なしとして拒絶されるためです。

「出願日」、「登録日」の他に【公開日】があります。この「公開日」以降は、特許が公開されますので、この公開日以降は他者が同じ内容の特許を出願しても登録されません。

最後に、色々と細かいことを書きましたが、大学や企業であれば「知財部」に相談すればほとんど解決できます(出願されるかは交渉次第ですが)。

個人で出願するのであれば、下記書籍を読んで、月一で市役所等で開かれている無料特許相談等にトライしてみるのもアリだと思います。

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