「機器分析」のYouTube動画を公開しています。色々と「コメント」や「いいね」いただいてモチベーションいただいています。ありがとうございます。
さて,なんだかんだ「定量分析」が一番大事だと考えています。
【どのぐらいの量】で どうなるのか?
この量を決定づけるのに,質量分析は強力なツールのひとつとも言えましょう。
※ 他のも公開しています。>> 機器分析YouTube動画一覧
質量分析の原理
装置構成によって色々な手法がありますが,質量分析の【原理】は以下の通りです。
- 測定物質をイオン化(電荷をもたせる)する。
- 電磁気的な相互作用を利用して質量の違いで分離する。
- 検出器にて信号をひろって,マススペクトルとして記録する。
「イオン化」と「電磁気的な相互作用による応答」が質量分析において重要なチェック項目です。
この「イオン化された測定物質が電磁気的な相互作用にどのような応答」をするかは,以下の関連動画で紹介しています。
電場と磁場中でのイオンのふるまい
【YuoTube動画】イオンの速度と向きを自由に制御
平均自由行程
イオン化された物質が装置内を動くには,「真空」が必要です。真空でなければイオン化さえた物質が空間の物質(窒素や酸素)と反応してイオン化状態ではなくなっちゃいますからね。
下記の動画では,この真空中でのイオンの動き,つまり「平均自由行程」について解説しています。
【YouTube動画】真空中のイオンの動き
質量分析の装置概要
下記には,装置概略図を示しています。
装置は,
- 試料導入部
- イオン化部
- 質量分析部
- 検出部
- データ処理部
から構成されています。本ブログでは,「試料導入部」・「イオン化部」「質量分析部」について紹介しています。
試料導入部
質量分析は,試料の状態を問いません。気体でも,液体でも,固体でも大丈夫です。
ただし,真空部と感度は密接な関係があります。真空度が高いほど,安定にイオンとして存在できるので感度も高くなります。このことからも,「液体試料」や「真空度が低い作り」は感度が下がるイメージを持っておいてください。
測定サンプルの状態は何でも良いのですが,イオン化部に導入する直前に「気体」にします。
試料導入部としては,混合物である測定サンプルを個々の単体に分離する必要があるので,クロマトグラフィーを用いることもあります。
【YouTube動画】ガスクロマトグラフィー
【YouTube動画】液体クロマトグラフィー
イオン化部
測定サンプルをイオン化する手法は様々に開発されています。
YouTube動画でも述べていますが,イオン化法の進化は「フラグメントイオンの抑制」を頭の片隅に置いておくと理解が早いです。
分析装置が「真空」なんですから,測定サンプルは「気体」である方が簡単です。
つまり,気体のイオン化法である「電子衝撃イオン化法(EI法)」と「化学イオン化法(CI法)」から始まるわけです。続いて,「真空」に有利なのは,固体試料ですよね。最後に,液体試料です。
この順番でイオン化法に関する説明がされている教科書も多数あります。
【YouTube動画】各種イオン化法(EI法,CI法,APCI法,ESI法,MALDI法)
なお,質量分析関連で多くのノーベル賞受賞者が出ています。田中幸一先生も質量分析のイオン化法である「MALDI法(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)」でノーベル賞を受賞しています。
質量分析部
イオン化された測定サンプルを「電磁気的な相互作用」により分離します。質量分析部は3種類です。
1.飛行時間型質量分析部 (Time-of-Flight)
イオン化されたサンプルに「電場」をかけることで,質量による速度の違いで分離検出します。
2.磁場型質量分析部 (Magnetic)
イオン化されたサンプルに,主として「磁場」をかけることで,磁場に対する応答の違いで分離検出します。
3.四重極型質量分析部 (Quadrupole)
Q-MS (キューマス)と言われる質量分析部です。構造が簡単なために他に比べて安価なために,学生実験の質量分析と言えば「四重極型質量分析」だと思います。
ただ,その分離メカニズムはメチャムズです。下記の授業動画では,数式をなるべく使わずにイメージで分離メカニズムを解説しています。
マススペクトルの解析のコツたち
質量分析は,測定サンプルの「質量」を知れるだけではありません。
マススペクトルを解析することで
- 分子構造の推定 (フラグメントの解析)
- 反応活性部位 (分解しやすい部分)
イオン化とフラグメント化
イオン化された測定サンプルは、その過剰なエネルギーのために断片化されることがあります。この断片化されることをフラグメント化と言います。
このフラグメント化に由来する「フラグメントピーク」を解析することで,測定サンプルがどのような構造であり,どこかイオン化の際に分解しやすいか(分解しにくい)がわかります。
同位体イオンピーク
また,測定サンプルには「同位体」が含まれています。
マススペクトルの「同位体イオンピーク」を確認することでも構造解析を行えます。
水素不足指数とベイノン表
マススペクトルの解析は,フラグメントの解析に加えて,「水素不足指数」および「ベイノン表」を学ぶことで手間が大幅に減ります。
YouTube 「とものらぼ」の授業動画一覧
機器分析の他にも公開しています。単位取得のため,資格試験のため,後学のため,ご活用いただければ幸いです。
無機化学 >> こちら
物理化学 >> こちら
電気化学 >> こちら
Youtubeはこちらから → YouTubeチャンネル「とものらぼ」
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