気象病 (大気圧変化による体調不良)
以前は,仮病?と言われていた気象病による片頭痛やだるさ。
痛い。
私も数年前より気象病の症状が悪化して,漢方を処方してもらっています。気象病とは,季節の変わり目である気温の変化や天気(気圧や湿度)によっておこる不調のことです。調べてみると,その症状は様々で,頭痛やめまい・耳鳴り・関節痛・古傷のうずきなどなど,私はひどい時にはここに列挙した症状が全て襲い掛かってくるので,たまに眉間にしわを寄せて歩いているときは「気象病」なんだな~っと思ってください(笑)
さて,人間は不思議なもので,理由がわかると緩和することがあります。あれほどイライラしていたのに理由を知ったら,そんなにイライラすることでもないとか。あるいは,原理を知ることで対策を打てます。また,当ラボは教員志望の学生が多くいます。こういった器具は触らないとですね!
今回はそんな話。
「学びを通して,気圧変化による頭痛:気象病を理解」です。
気象病は,気圧の変化による体液の循環が悪くなることが原因だと言われています 。
体内の水分量が多くなり血管が拡張して神経を圧迫することで頭痛は起きるので,気圧の変化や汗をかきにくくなる梅雨の時期に気象病の症状が出てくるのは理にかなっていると思います。 (昔は仮病とか・・・いや~大変だっただろうに。誰かが気象病を定義してくれてありがたや!)
さて,私が飲んでいる漢方は「五苓散(ごれいさん)」で・・・ 「五苓散(ごれいさん)」 なんですが漢方を紹介したいわけではなく,今回紹介したいのは「天気管」です(*’▽’)
天気管(晴雨予報グラス)
晴雨予報グラスである天気管(ウエザーグラス)は以下のようなものです。科学館や雑貨屋なんかにも置いてあったりしますよね。見たことありますか?
文豪ゲーテが発明
さて,この天気管の歴史は古く,文豪ゲーテ(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ)が関係してきます。ゲーテと言えば,法律家やったり宰相やったりと自然科学(ニュートンと色彩で対決したり)に没頭したりなど多彩な才能を発揮し,「ファウスト」という詩劇が有名ですよね。また,数々の音楽家にも影響を与え,特にシューベルトとコラボした歌は70曲もあるなど・・・ゲーテだけでたくさん文章が書けちゃいますね。
ゲーテのバロメーター(Goethe barometer)
いろいろな形がありますが,ゲーテのバロメータは壁に据え付けタイプのようです。ゲーテはトリチェリ(エヴァンジェリスタ・トリチェリ)の考案した水銀圧力計をもとにして気圧計を発明したようです。(※圧力の単位Torr(トル)の由来はトリチェリです)
バロメータとは,洋ナシ型のグラスの下端から細長く伸びた鶴首状のガラス管からなります。この鶴首状の中の水が上下することで,気圧の変化を示して,その動きで天気を予想することができます。大航海時代の船には設置されていて,半日先の天気予想ができて役立つと広く親しまれたようです。
なお,バロメーターはとにかく大きいので買う際には覚悟を決めてください。30cmぐらいあります。
天気管による実験
さて,当ラボにも天気管があります。天気管の写真と撮影した時の気圧と平均温度を気象庁で調べた結果を記載します。(結構,気圧との相関性が高くって驚いています。。。)
1001.3 hPa
平均気温 7.9℃ (最高 14.5℃ 最低 3.1℃)
1005.5 hPa
平均気温 3.6℃ (最高 7.4℃ 最低 0.5℃)
1014.4 hPa
平均気温 3.4℃ (最高 8.1℃ 最低 -1℃)
お分かりのとおり,気圧が高くなるにつれて,鶴首状ガラス管の中の水が下がっているのがわかるかと思います。数十ヘクトパスカルの違いがわかるんですよ。すごいですよね。ウェザーグラス! ウェザーグラス! ウェザーグラス!
天気管(ウエザーグラス)の原理
天気管の特許があったのでこちらも参考になるかもです。さて,天気管の原理です。
天気管の原理
外界とつながっている鶴首状ガラス管内の水を大気圧が上下させています。
実験結果および模式図から,
大気圧が高い場合,ガラス管内の水を押し下げるので,水位が下がる。= 高気圧
大気圧が低い場合,ガラス管内の水を押し下げる力が弱まり,水位が上がる。= 低気圧
という原理であることがわかります。
購入して実際に記録と天気管の様子を見比べる前は,間違った原理で天気管を考えていました。上記の模式図の球体内の気体が,高気圧の場合は膨張して水位を押し上げて,低気圧の場合は収縮して水位が下がると考えていました。本当の原理とは真逆の現象を示していて,間違いであることに気が付きました( `ー´)ノ
「やっぱり,手を動かして注意深く観察すべきだな」と天気管を購入して思いましたね。
天気管の調製方法のコツ
さて,ご紹介している「晴雨予報グラス ウェザーリポーター THE EARTH 天気予報 インテリア」であれば,詳細な作り方が書いてあるので問題ありません。ここでは,ほんのちょっとしたコツを書いておこうかと思います。
内容物として
・天気管本体 (ガラス製)
・注射筒と管
・青色色素
天気管本体
天気管本体はガラス製なので気を付けましょう。(触っていたら,割りました・・・もう一個買うか・・・)
青色色素
注射筒の先端に管を付けて液体を天気管本体に入れていくのですが,その入れる液体に色を付けることができます。この青色色素がなかなか曲者です。この色素はほんの少量で結構な青色になります。袋の中の色素を全部入れて青水を【絶対」に作らないようにアドバイスします。実際には,耳かき一杯程度が「綺麗な青色」になるかと思います。また,手につくととれませんし,服につくと落ちません。
水の量
天気管をひっくり返して水を入れていきます。天気管の上下を戻した時に,南アフリカの先端がちょこっと浸かるぐらいの水の量が良いと思います。なぜ,水の量にこだわるかというと,気圧によっては天気管から水があふれるからです。そのため,実験の写真では【受け皿】に天気管をのせています。青い水があふれて悲しくならないように,受け皿の準備をしてくださいね。
天気管と気象病
さて,気象病の話に戻ります。気象病は低気圧の時に症状が出やすいと言われています。頭痛い!
天気が悪いのは一般的に【低気圧】です。
昔習った頭痛のメカニズムと気圧の関係を考えると以下のメカニズムが提案できます。
- 気圧が低下することで体にかかる圧力も低下する。
- 血管にかかる圧力も当然減る。
- 血液中の水分が細胞に移動することで肥大し,むくみの原因となる。
- 痛みを知らせるヒスタミンやブラジオキニンの量が増える
- いたい!
数hPaの違いで,あんだけ水位が変化していれば,それは頭も痛くなるもんですよ。
この気象病からの頭痛アタックは,天気管で考えると水位が上がってるときに起きるということです。
つまり,水位が高いほど,気象病の症状が出てくる可能性が高くなる!!
(漢方( 五苓散(ごれいさん) )を飲みましょう(笑))
さらには,気象病で頭が痛いときに限って,青い液体が漏れて部屋や服が汚れると目も当てられないので,受け皿も必要です。
天気管が「半日後に頭痛いの来るぞ!」って教えてくれます。
天気と気圧の関係
大気の流れ
水が「高いところ」から「低いところへ」流れるように,
気体も「高い気圧」から「低い気圧」へ流れます。
前述した「低気圧は一般的に天気が悪い」の「低気圧」や「高気圧」は大気(気体)の圧力のことです。この圧力が高い気体を「高気圧」,圧力が低い気体を「低気圧」といいます。
高気圧に対して,圧力が低い気体を「低気圧」というので,【ここから低気圧!】という明確な数字があるわけではありません。
低気圧とは
気圧の高低が生じる理由については,後述します。
- 大気は,「高気圧」から「低気圧」に流れます。
- 低気圧というバケツに流れてきた大気は,上空にしか逃げる場所がないため,上昇気流が発生します。※低気圧というボトルにどんどん空気を送り込むと地面があるために,空気は開いている「上」にしか移動できなくなります。
- 上昇気流に乗った大気中の水蒸気が冷やされ水滴や氷となります。
- この水滴や氷が雲になります。
- 雲の中で集まって自重に耐えられなくなった水滴や氷が,雨や雪となります。
このため,天気図で【低気圧」があると,その周囲は【曇り】【雨】【雪】となり天気が崩れます。
高気圧とは
低気圧とは逆の現象が起きます。
- 低気圧に大気が流れる前は,高気圧は「気圧が高い」ので大気が【濃い】状態にあります。
- 低気圧は,「気圧が低い」ので大気が【薄い】状態にあります。
- 大気の流れが生じた後に,高気圧は「大気がなくなります」ので,「上空からの大気」を取り入れます。
- 下降気流が発生するので,上空の雲は地面に下りてきて消えてなくなります。
つまり,天気図で「高気圧の周辺」は,上空の雲が消えますので「晴天」になるわけです。
気圧の高低差が生まれる理由
高気圧は周囲に比べて「大気が濃く」,低気圧は周囲に比べて「大気が薄い」です。
なぜ,このような差が生まれるか?
それは,太陽による温まり方が同じではないからです。海と地面(水と土)だと,温まりやすく・冷めやすいのが違ってきたりします。この辺りを専門的に学びたい場合は,YouTube動画をご覧ください。リンクを貼っておきます>>「熱容量(08:47)」
さて,ここが大事なのですが,太陽が温めるのは「大気」というよりはむしろ「地面(or 海)」です。
太陽により温められた地面が,得たエネルギーを放射熱として「大気を温めます」。つまり,「大気」は太陽と地面の両方から温められますので,気温と地温(地面の温度)の最高温度に達するのにインターバルがあります。
小学校か中学校で学ぶかと思いますが,次のグラフは「太陽の最高高度と気温と地温」です。
その温かい地面の近くにある「大気」が温度が高くなります。大気は温度が高いほど体積が大きくなります。(風船をお湯につけるとさらに膨らみますが,氷水につけるとしぼむのと同じです。)
体積が大きくなる(膨張)と密度が小さくなります。(1Lあたりの重さが軽くなります。)大気にも重さがあるので,密度が小さくなるということは軽くなることなので「上に」のぼり始めます。大気が上に上る(上昇気流が発生)ので,大気が少なくなるということなので,大気圧が低くなり低気圧となるわけです。
- 太陽光が地面を温める。>>太陽光が当たりにくい所等々,温まり方に差がある。
- 地面が放射熱により周囲の大気を温める。
- 大気が温まると膨張する。
- 膨張すると密度が低下する。
- 密度が低下すると軽くなる。
- 軽いので上に上る。 >> 上昇気流
- 大気が上に上るので,大気が薄くなる。
- 大気が薄いので,気圧が低い >> 低気圧
おススメ図書
「空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑」ですね。Amazonレビューが2000に達するほど多くの方に支持されている図鑑です。写真や文章がわかりやすいのか,子どもが読んで色々と私に教えてくれます。
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おまけ
なお,膨張した「温かい大気」は上昇するのに,上空は冷たいですよね。
なぜ,上空が冷たいかというと,温かい大気がどんどん上昇するとどんどん膨張します。この膨張時に,周囲の大気を押しのけるのに熱エネルギーを使うために大気の温度が下がり,上に行くほど寒くなります。
※熱膨張と断熱膨張※
めちゃくちゃ専門的なので読み飛ばしてください。大学で物理化学を学んでいる学生さんは理解してください(笑)。
暖かい大気が上昇するのに,上空が寒い理由は二つあります。
ひとつめ!
① 上記のかみ砕いた説明のとおりですが,正確には「熱膨張(等温膨張)」と「断熱膨張」が関係しています。内部エネルギーUは,仕事Wと熱Qから次式が導かれます。
※ U = W + Q
② 太陽や地面といった外部から熱(Q)をもらいます。熱をもらうことで大気は膨張(W)します。ある温度に達する(等温)と軽くなるので,大気は上昇し始めます。つまり,上昇している大気は,熱(Q)と膨張仕事(W)を足したある内部エネルギーをもった大気とみなせます。
※ ここで,仮の数字を設定します。熱(Q)50,膨張仕事(大気が体積を維持)50。
③ 太陽からの熱エネルギーよりは地面からの放射熱による供給が大きいため,ある程度の高度に達すると上昇し始めた大気の内部エネルギーは一定となります。 (一定:内部エネルギーが増えない)。この時点を「等温膨張」ということにします。(ちょっと変かな)
※ 熱50と膨張仕事50を足した「100」が内部エネルギーです。内部エネルギーUは一定なので,この100という状態で上昇し始めると仮定します。
④ 周囲に大気がないので上昇すればするほど,大気は膨張します。この膨張時に,仕事を使う必要がありますよね。仮に内部エネルギーが外部に消費(100から80に減るなど)されない場合でも,内部エネルギーの熱を使って仕事をすることになります。このように,外部からエネルギーを供給されることもなく,膨張することを「断熱膨張」といいます。
※ 熱50のうち,30を使って,体積膨張するということです。内部エネルギーは一定の100ですが,熱は20に下がり,膨張仕事は80に増えます。つまり,体積は膨張しますが,気温は下がるということです。
ふたつめ!
大気が薄いからです。地球温暖化という言葉をどこかで聞いたことがあるかと思います。地球温暖化の原因である温室効果ガスは「二酸化炭素」と言われていますよね。大気に含まれる割合として0.03%が二酸化炭素です。温室効果ガスとしては二酸化炭素の他に水蒸気の役割が大きいのですが,これら二酸化炭素や水蒸気などの温室効果ガスが全くないと,地球の平均気温はー19℃になると言われています。2022年の現在において,地球の平均気温は14℃と報告されていますので,温室効果ガスがないだけで33℃も気温が下がることになります。
はじめに戻りますが,「ふたつめ!」の理由ですが,これらの気温上昇のために必要な大気自体がないので寒いのです。
以上です。
このあたりの熱力学に関する授業動画をYouTubeでアップしています。ぜひ、後学のためにご笑覧ください。中学・高校の初等数学がわからなくても理解できるようにしています。
次回は,前線と気団について書くよていです。長期休みの自由研究に役立てば何よりです。
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