ゼロエミッション
環境の質の保全と持続可能な開発を同時に達成するために、資源利用の最適化と廃棄物の最小化を促進する必要性があり、そのためには生産の効率化と消費形態の変化が求められる。これらの変化は多くの例に見られるように、産業界において発展し、他の場所で模倣されてきたこれまでの生産および消費形態の方向転換を必要とする。
国連大学(UNU) アジェンダ21 第4章15頁 (1992)
この文章を発端として生まれた「ゼロエミッション」とは,「資源を循環させ,自然への廃棄物の排出をゼロにする」取り組みのことです。
1994年に国連大学が【循環型社会実現】のためのコンセプトとして「ゼロエミッション」という考えを提唱しました。1995年から1998年まで毎年行われたゼロエミッション国際会議のイベントを通して、全世界の産業界・政府や市民団体に浸透していきました。1999年以降、国連大学により設立された国連大学ゼロエミッションフォーラムという組織により,ゼロエミッション関連の活動を促進していくことが正式に決定され,このフォーラムには日本からも多くの方が参加しています。
ゼロエミッションを学ぶ上では,その資源の流れを知ることがもっとも大事だと思います。
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さらには,資源として利用されずに廃棄されている現状を学ぶことで資源循環の在り方を考えるキッカケとなりえます。
「ごみ」を「資源」に。
当ラボには教職志望の学生さんが希望してきます。当ラボは【リサイクルを軸】としたエネルギーの創製と貯蓄に関する研究を進めながら,研究以外として産学官(地域)とのつながりや今後の教育に活かせそうな課題を考えて活動するというラボでもあります。学生にとっては学内外での様々な活動があって大変ですが,「様々な経験を経てきちんと実力を身につけた学生を輩出している」と自負しています!
さて,話戻りまして,この「資源として利用されずに廃棄されている」を体系的に調べるのは骨が折れます。
しかしながら,これをよくよーく考えてみると,
- 家庭の保護者の立場としては,「夏休みの宿題」に最適なお題
- 学校の教員の立場としては,「SDGs」や「ゼロエミッション」や「循環型社会」を知るうえで最適な教材
となりえますよね!
子どもたちには普段使っているものを「ごみ」とするのか「資源」とするのかを考えることは,循環型社会を理解するだけではなく,「物を大事にする心」を育むキッカケにもなりえますし,モノに対する接し方から人間関係の構築,リサイクル工学や科学技術がどう発展してきたか,さらにはここから未来を担う研究者が輩出されるかもしれません。
「ごみゼロ大事典」という良本にたどり着く
リサイクル工学の研究に従事していますので,様々な【ごみ問題】には注目していました。未来の科学者を育成しうる教員志望が多く在籍する友野研究室としても!この課題に取り組んだ方が面白いだろうと常々考えています。こういったことを頭の片隅に置いておくと,不思議なことに自然と目や耳が情報を追いかけます。あるいは,そう言ったものが勝手によってきたりもします(※ 科学的ではありませんが、セレンディピティ(Serendipity)に出会うっていうのはこういうことだと思っています)。
そして,筆者の方(NPO法人木野環境)と知り合いのため,「まー何かの参考になるかな?」という軽いつきあい気分で購入した本が当たりでした。
当たりも大当たりの「ごみゼロ大事典」です。研究者ですから文字ばかりの資料はたくさんあるのは知っているのです。このように【写真付きでまとめられた本】を探していたのです。
これまで時間をかけて文章を読み解いてグラフ化したりして調べていたことが,【写真付きで網羅】されています。研究者や教育者にとっては,この本は「子供の頃に読んだ恐竜図鑑や乗り物図鑑に似たワクワク感」があります。学校の教材としても非常に役に立つこと間違いありません。先生も色々と調べる手間が省けます。各学校に1セットあっても良いと思います。推し!推し!
勘の良い当ラボの学生さんも早速買っていたということは20代の若手教員志望の心に刺さるということです。。。
そして、本のカバーの袖にこんなメッセージが書いてあります。
「ごみを調べて「ごみはゼロにできる」と思った人が集まって、「ごみゼロ大事典」を作りました。どうすればごみゼロが実現できるのか,そのヒントが3巻の中にあります。」
私、こういう話好きなんです(笑)。
さて、各事典の最初のページには、「この本の使い方」が掲載されています。
生徒や学生さん・子どもは好き勝手に読み始めるでしょうが,教材として使う場合,こういった「使い方」が書いてあるとなにかと便利なんです。
各ページには,【考えようQ】と【なるほど!】があります。
- 【考えようQ】には,各ページで取り扱う「ごみ」についての疑問や調べてほしいことが書かれています。
- 【なるほど!】には,各ページの「ごみ」の大事なポイントが書かれています。
写真も豊富で各ページで取り扱う「ごみ」のリサイクル方法や対策を知れる工夫がなされています。
例えば,特定4家電(冷蔵庫・洗濯機・テレビ・エアコン)をあつかう家電「ごみ」のページでは,雑学として,都市鉱山のコラムもあります。
140gのIC基板から採れる金は,金鉱石60kg分と同じ!って知ってました!?
(私は一応知ってました。)
第1巻の「家庭のごみ」だけでも,180近いキーワードがあって、結構お腹いっぱいになります。
でもって、2巻の「社会のごみ」が興味深く勉強になるんです。別腹です。
1巻の「家庭のごみ」とは違って、2巻の「社会のごみ」では、学校・病院・農業などの社会生活から出る「産業ごみ」、不法投棄や災害ごみも扱い、最後には「宇宙のごみ」を紹介し、「ごみ」を減らす社会システムやリサイクル技術を紹介してます。食品ロスの問題から,規格外の野菜のページもあります。
そして,災害で発生する「ごみ」や不法投棄,そして,放射性物質の「ごみ」など,社会問題の「ごみ」についても学べ,深く知る第一歩としてはとても始めやすい事典です。
そして,身近な問題となってくるであろう「宇宙のごみ」である人工衛星の【墓場軌道】や【宇宙ゴミの回収プロジェクト】のコラムを読むことができます。
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そして,第3巻「未来のごみ」について。(この3巻が、粋を感じました)
昔ながらの「ごみ」にならない「ふろしき」のお話から,修理を通しての「一生ものの価値」のお話しなど,これまでとは違ったアプローチで「ごみ」について知れるのが第3巻の「未来のごみ」です。
「一生ものの価値」については,【LINKAI横浜金沢】にある【山田工業所】の記事があります。この記事も読んでいて「かっこええな~。鍋ほしい。」と思っちゃいます。
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横浜中華街のプロに選ばれる中華鍋の専門メーカー「山田工業所」さんから教わったこと
この記事に出てくる山田豊明さんには,いつかお会いしたい人と思っています。(叶え☆!)
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